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オンライン辞書,Dictionary


No.202
作文
2016/05/02
出身: 東京
居住: 横浜
20代 男性
ログイン名: 原田重吉
タイトル:言葉づかいだけが問題か?
   企業への就職活動をはじめとして、社会全体で「コミュニケーション力」への関心が高まり始めて、すでに久しい。本文では大学生が言葉づかいに悩むシチュエーションの具体例を通し、「コミュニケーション力」の本質について考える。
 我々が言葉づかいに悩む状況をいくつか思い浮かべてみると、どの事例にも共通する部分がある。それは話者同士に共通項が乏しいということだ。老人、子ども、異性、初対面など、話者の一方たる自分との共通項が少ない人々と会話するとき、我々は言葉づかいに悩む。何故だろうか。
 筆者の考えるところによれば、それは根本的には言葉づかいではなく、会話の題材の問題である。言葉づかいのうちどれが適切かは相手と自分との関係性によって決められる。だが両者の間に共通話題がなく、しかし何らか目的・理由・事情によってコミュニケーションを当座の間、成り立たせなければならない、という状況ではどうだろうか。話題が無くしては話者の関係性はなかなか生まれず、関係性がなければ適切な言葉づかいを選ぶことも難しい。言葉づかいに悩んでいる状況それ自体は、コミュニケーション不全が起きた結果の表面的な一部分に過ぎないのだ。
 実例を考えてみよう。若い男子大学生であるAは故あってしばらく親戚の家から通学することになった。距離感的に他人ではないが、かといって敬語一辺倒も堅苦しい間柄の叔父叔母年下のいとこがいる。話題が無い。どうやって話すか?
 以上言葉づかいに悩む状況について考察した。このような共通項に欠ける結果としてのコミュニケーション不全に対応する方法、つまるところ相手を知り、理解し、理解しようとする過程で話題を見つけていく、という作業に努めることに他ならない。コミュニケーションの本質は相互理解である、ということを改めて思い出すことで、この問題については十分なのではないだろうか。
 
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